アウトバウンドEC支援

プロジェクトの背景

1. 国内市場の成熟と海外市場への活路

日本の国内市場は人口減少と少子高齢化が進み、多くの分野で成熟期を迎えています。企業が持続的な成長を遂げるためには、新たな市場を開拓し、販路を拡大することが不可欠です。この状況において、インターネットを通じて世界中の消費者に直接アプローチできる越境ECは、地理的な制約を越えて市場を拡大するための最も効果的な手段の一つとして注目されています。特に、これまで海外展開のハードルが高かった中小企業にとって、越境ECは低コストでグローバルビジネスに挑戦できる大きなチャンスを提供します。


2. 日本製品への高まる海外需要とブランド力

アニメや漫画、ゲームといったクールジャパンコンテンツの影響に加え、日本の高品質な製品、きめ細やかなサービス、そして食文化は、世界中で高い評価と需要を得ています。特に、日本の伝統工芸品、高品質な食品、ユニークな日用品、そして機能性に優れた家電製品などは、海外の富裕層や日本文化に興味を持つ層から強い支持を受けています。しかし、これらの製品の多くは、まだ海外市場に十分に流通しているとは言えません。越境ECは、このような海外からの「日本製品が欲しい」という潜在的な需要と、日本の素晴らしい製品を直接結びつける架け橋となります。


3. JETRO「新規輸出1万者支援プログラム」が示す追い風

日本政府は、国内企業の海外展開を積極的に後押ししており、JETRO(日本貿易振興機構)が推進する「新規輸出1万者支援プログラム」はその象徴です。このプログラムは、輸出に初めて挑戦する企業や、新たな品目を輸出する企業を対象に、専門家による相談、セミナー開催、ビジネスマッチング支援など、多岐にわたるサポートを提供しています。この政府主導の強力な支援策は、企業が越境ECを含む海外輸出に踏み出す上での心理的・実務的なハードルを大きく下げる「追い風」となっています。本プロジェクトは、このJETROのプログラムと連携することで、より多くの企業が越境ECによる海外展開を成功させられるよう、具体的な実行支援を提供します。

課題

1. 高騰する国際物流コストと複雑な通関手続きの壁

越境ECにおいて、商品を顧客の手元に届ける国際物流は、最も費用がかかり、かつ複雑な要素の一つです。特に、緊急性や利便性を重視する越境ECで多く利用されるEMS(国際スピード郵便)は、その輸送コストの高さが中小企業の利益率を大きく圧迫しています。EMSは確かに迅速ですが、一定の重量や容積を超えると、その料金は目覚ましく跳ね上がり、販売価格への転嫁が難しくなるほどです。

また、航空便だけでなく、コスト効率に優れる船便を選択しようとすると、今度はリアルタイムでの貨物追跡(トラッキング)機能の不足、長いリードタイム、そして多岐にわたる国ごとの通関手続きの煩雑さが障壁となります。各国の輸入規制、税関の要求する書類、関税・消費税の計算と徴収方法はそれぞれ異なり、これを正確に理解し、滞りなく処理することは、専門知識なしには非常に困難です。これらの物流と通関に関する課題は、企業が越境ECに参入する際の大きな心理的・実務的なハードルとなっています。


2. 言語・文化の壁と、現地に即したデジタルマーケティングの不足

海外市場への進出は、単に商品を輸出するだけでなく、異なる言語や文化を持つ消費者とのコミュニケーションを意味します。ECサイトの多言語対応はもちろんのこと、現地の消費者が共感できるようなマーケティングコンテンツの制作、顧客サポート体制の構築は必須です。しかし、ターゲット国の言語に堪能な人材の不足や、その国の文化背景を深く理解した上でのローカライズ(現地化)の難しさが、多くの企業にとって課題となります。

さらに、海外でのデジタルマーケティングは、国内とは異なる知識と戦略が求められます。国によって主要なSNSや検索エンジンが異なり、効果的な広告運用やインフルエンサーマーケティングの手法も多種多様です。単に広告を出稿するだけでは効果が薄く、現地のトレンドや消費者の行動様式を理解し、データに基づいた戦略を立案・実行できる専門知識が不可欠となります。これが不足していると、せっかく構築したECサイトへの集客が伸び悩み、海外でのブランド認知度向上も難しくなります。


3. 多様な決済手段への対応と法規制への遵守

越境ECでは、ターゲットとする国ごとに主要な決済手段が異なります。クレジットカードだけでなく、各国の電子マネー、銀行振込、後払いなど、消費者が慣れ親しんだ決済方法に対応できなければ、カゴ落ち(購入に至らずサイトを離脱すること)の原因となりかねません。また、国際的な決済システム導入に伴うセキュリティリスクや、手数料、為替レートの変動も、事業者にとっては管理すべき重要な要素です。

加えて、越境ECには、各国の消費税や関税輸入規制個人情報保護法(例:EUのGDPR、米国のCCPAなど)消費者保護法といった複雑な法規制が伴います。これらの法律を遵守しない場合、罰金や事業停止のリスクがあるため、常に最新の情報を把握し、適切な対応をとる必要があります。特に、輸出入品目ごとの詳細な規制は、専門家によるサポートなしには把握しきれない領域であり、これが新規参入の障壁となっています。


4. 信頼できるパートナーシップの構築と情報連携の課題

越境ECの成功には、物流、決済、マーケティング、法務など、多岐にわたる専門分野のプロフェッショナルとの連携が不可欠です。しかし、信頼できる海外のパートナー(現地の物流業者、通関業者、マーケティング会社など)を見つけ、彼らと円滑な協力関係を築くことは容易ではありません。

また、各パートナー間で情報をリアルタイムかつ正確に共有するためのシステム連携も大きな課題です。貨物の追跡情報、在庫状況、顧客データ、販売データなどが分断されていると、迅速な意思決定やトラブル対応が難しくなります。一貫した情報管理体制を構築し、全ての関係者が同じ情報にアクセスできる環境を整えることが、効率的な越境EC運用には不可欠です。

目標

1. 「高額な輸送費」のSOSを解決:コスト効率と透明性の向上

越境EC事業者の皆様が最も頭を悩ませていた「輸送費の高騰」、特にEMSの高額さにまつわるSOSに対し、本プロジェクトは画期的な解決策を検討しております。

  • EMSからの脱却とコスト削減: これまでEMSに依存していた輸送手段を、海上輸送(船舶便)の活用を核とした、より費用対効果の高い複合的な物流ソリューションへと転換します。これにより、商品の種類や量に応じて最適な輸送モードを選択できるようになり、大幅なコスト削減を実現します。特に、重量物や大量の貨物、あるいは頻繁な小口発送におけるコスト負担を軽減し、利益率改善に直結します。
  • 不明瞭な輸送状況からの解放: 従来の船便に欠けていたリアルタイムトラッキング機能を導入します。貨物がどこにあり、いつ到着するのかが明確に把握できるため、情報不足による不安を解消し、お客様からの問い合わせにも迅速かつ正確に対応できるようになります。これにより、顧客満足度の向上と、オペレーション負荷の軽減に貢献します。

2. 「複雑な国際物流・通関」のSOSを解決:手間の削減とリスク低減

越境ECの参入を躊躇させていた物流・通関手続きの複雑さというSOSに対し、専門的なサポートで事業者の負担を軽減します。

  • 煩雑な手続きからの解放: 国ごとの異なる通関手続き、必要書類の準備、関税・消費税の計算といった煩雑な作業を、弊社の専門知識とパートナーネットワークを通じて代行・サポートします。これにより、事業者は本来のビジネスである商品開発やマーケティングに集中できるようになります。
  • 法規制リスクの低減: 各国の輸入規制、消費者保護法、個人情報保護法など、常に変化する国際的な法規制や税制に関する最新情報を提供し、遵守を支援します。これにより、知らずに法規違反を犯してしまうリスクを最小限に抑え、安心してビジネスを展開できる環境を構築します。

3. 「海外展開のノウハウ不足」のSOSを解決:成功への道筋を提示

海外市場への進出に際して感じていた「何から始めれば良いか分からない」「現地の特性が掴めない」といったノウハウ不足のSOSに対し、包括的な支援を提供します。

  • 包括的なアウトバウンドEC戦略の立案: 貴社の製品やターゲット市場に合わせた最適なECプラットフォームの選定、ローカライズされたコンテンツ戦略、現地に響くデジタルマーケティング戦略など、越境EC成功のためのロードマップを共に策定します。
  • JETROプログラムとの連携による安心感: JETROの「新規輸出1万者支援プログラム」と密接に連携することで、国が推奨する輸出支援体制と弊社の実践的なノウハウを組み合わせ、より多くの企業が越境ECに挑戦しやすい環境を創出します。これにより、政府の後押しがあるという心理的な安心感と、具体的な支援を同時に享受できます。

4. 「機会損失」のSOSを解決:新たな市場と収益源の開拓

国内市場の成熟により感じていた「成長の停滞」というSOSに対し、海外市場への新たな活路を開きます。

  • 未開拓市場へのアクセス: 日本製品に対する高い海外需要があるにもかかわらず、これまでの物流やノウハウの壁でアプローチできなかった潜在的な市場へ、貴社の製品を届けられるようになります。これにより、新たな顧客層を獲得し、売上拡大と収益源の多様化に貢献します。
  • ブランド価値の向上: 海外での販売を通じて、貴社の製品やブランドが国際的な認知度を獲得し、ブランド価値を高めることができます。これは、国内市場における競争力強化にも繋がる好循環を生み出します。

目標

このアウトバウンドEC支援プロジェクトは、越境EC事業者の皆様が直面する様々な課題を解決し、グローバル市場での成長を強力に後押しするための、包括的かつ実践的なソリューションです。皆様のビジネスが新たなステージへと飛躍できるよう、全力を尽くしてまいります。