日台間船舶物流改善

プロジェクトの背景

近年、インターネットとグローバル化の進展により、越境EC(E-commerce)はビジネスにおいて不可欠な成長エンジンとなっています。特に、経済的・文化的結びつきの強い日本と台湾の間では、個人から企業まで、多種多様な商品のオンライン取引が日々活発に行われています。弊社のクライアント様の多くも、この越境ECの波に乗り、目覚ましい事業拡大と顧客基盤の強化を実現されてきました。しかし、その輝かしい成長の裏側には、常に大きな課題として立ちはだかる「輸送費の高騰」という現実がありました。

越境ECにおいて、迅速かつ確実な商品配送は顧客満足度を左右する生命線です。そのため、多くの事業者がEMS(国際スピード郵便)を主要な配送手段として選択しています。EMSはその高いスピードと手軽さで多くのメリットを提供しますが、その一方で、特に一定の重量やサイズを超える貨物や、頻繁な小口発送を伴うビジネスモデルにおいては、輸送コストが驚くほど高額になり、事業利益を著しく圧迫するという深刻な難点がありました。このコスト負担は、商品の価格競争力を低下させ、最終的には消費者への価格転嫁を招き、ひいてはビジネスの持続可能性そのものに影響を与えかねない喫緊の課題として、弊社のクライアント様からも数多くの「SOS」が寄せられていたのです。

海上輸送便の検討

このようなクライアント様の切実な声に真摯に応えるため、弊社は彼らの越境EC事業をより一層力強くサポートすべく、この輸送費の根本的な解決策の模索に本格的に乗り出しました。そして、私たちが今、この課題を打破する上で最も有望な選択肢として深く掘り下げ、改善の鍵と見ているのが「海上輸送(船舶便)」の革新的な活用です。

従来の海上輸送は、EMSと比較して劇的にコストを抑えられるという圧倒的な利点を持つ一方で、その利用にはいくつかの障壁が存在しました。例えば、「リアルタイムでの貨物追跡(トラッキング)ができない」「リードタイムが読みにくく、配送計画が立てづらい」「小口貨物には不向き」「通関手続きが複雑」といった課題は、特にスピードと情報透明性が求められる越境ECにおいて、海上輸送をメインの選択肢とすることを躊躇させる大きな要因となっていました。

しかし、弊社はこれらの「従来の常識」を打ち破り、海上輸送の持つ潜在能力を最大限に引き出すことに挑戦しています。現在、私たちは、台湾の業界内で高い信頼と実績を持つサービスプロバイダーと綿密な連携体制を構築し、EMSの高額なコストという課題を根本的に解決しつつ、海上輸送の弱点を克服するための具体的な改善策を、多角的な視点から検討・開発しています。

課題

「日台間船舶物流改善」プロジェクトは大きな可能性を秘めていますが、その実現にはいくつかの重要な課題を乗り越える必要があります。

1. 既存の海上輸送が抱える基本的な課題

  • リードタイムの延長と変動: EMSと比較して、船舶便は物理的に時間がかかります。天候や港湾混雑、税関検査などによって、さらに遅延が発生する可能性も高く、安定したリードタイムの確保が難しい場合があります。特に越境ECでは、消費者が配送スピードを重視する傾向にあるため、この点をどう説明し、納得してもらうかが課題です。
  • リアルタイム追跡(トラッキング)機能の高度化: 一般的な船便では追跡情報が限定的です。船舶の現在地だけでなく、港での荷役状況、税関の通過状況、陸上輸送への引き継ぎなど、一貫した詳細なトラッキング情報をリアルタイムで提供するためのシステム開発と連携が不可欠です。複数の関係者(船会社、港湾、通関業者、陸送業者)からの情報収集と統合は複雑なプロセスを伴います。
  • 小口貨物(LCL)の効率化とコスト: EMSの代替として小口貨物を取り扱う場合、複数の貨物をコンテナに混載するLCL(Less than Container Load)輸送が中心になります。しかし、LCLは貨物の積み下ろし、仕分け、ドキュメント作成など、FCL(Full Container Load)に比べて手間とコストがかさむ傾向があります。これをいかに効率化し、EMSよりも魅力的な価格で提供できるかが課題です。

2. 通関手続きと法規制の複雑さ

  • 両国の通関プロセスの理解と最適化: 日本と台湾それぞれの通関手続き、必要な書類、品目ごとの規制(食品衛生法、電気用品安全法など)は異なります。これらの複雑なプロセスを円滑に進めるための専門知識と体制が必須です。特に越境ECの小口貨物では、多数の個別品目に対応する必要があります。
  • 関税・消費税の明確化と負担: 消費者が最終的に支払う関税や消費税を事前に明確に提示し、サプライズをなくす必要があります。DDP(Delivered Duty Paid、関税込み)のような形式での提供を検討する場合、その算出と徴収の仕組みを構築する必要があります。
  • 規制変更への対応: 国際物流に関する法規制や税関の運用は変更されることがあります。常に最新の情報をキャッチアップし、サービス内容を適応させていく必要があります。

3. パートナーシップと運用体制の構築

  • 信頼できるパートナーの確保: 船舶会社、港湾オペレーター、現地倉庫、陸上輸送業者、通関業者など、多数の事業者との連携が不可欠です。信頼できるパートナーを選定し、強固な協力関係を築くことが成功の鍵となります。
  • 情報連携とシステム統合: 各パートナー間で貨物情報、スケジュール、追跡データなどをスムーズに連携させるためのITシステムの統合やインターフェースの構築が必要です。情報のサイロ化を防ぎ、一貫したサービス提供を実現するための技術的な課題は大きいでしょう。
  • 緊急時の対応とリスク管理: 輸送中のトラブル(天候不順、事故、税関での問題など)発生時の迅速な情報共有、代替案の提示、損害賠償など、緊急時の対応体制を確立しておく必要があります。

4. 市場への浸透と顧客獲得

  • EMSからの顧客移行の促進: EMSの利便性や認知度に慣れている顧客に対し、船舶便の新たなメリット(コストとトラッキング)をいかに効果的に伝え、利用を促すかが重要です。不安を払拭し、信頼を獲得するためのマーケティング戦略が求められます。
  • サービスの差別化: 既存の船便サービスや他の物流ソリューションとの違いを明確にし、独自の価値を訴求する必要があります。特に小口越境EC向けに特化したサービス設計が重要です。
  • 価格競争力: EMSよりも低価格で提供できることが大前提ですが、同時にLCLの効率化やサービス品質を維持しながら、採算を確保するバランスを見つける必要があります。

目標

この「日本台湾間 船舶物流改善」プロジェクトでは、単に輸送費を安価にするというだけでなく、より費用対効果が高く、そして安心してご利用いただけるような、新たな海上輸送ソリューションの構築を目指しています。具体的には、最新のテクノロジーを駆使したリアルタイム貨物追跡システムの導入により、貨物の現在地や到着予定時刻をいつでも確認できるようにします。また、越境EC事業者が直面する通関手続きの複雑さを解消するためのサポート体制の強化や、小口貨物にも対応できる柔軟な混載便(LCL)サービスの最適化にも力を入れています。

私たちは、この革新的な船舶物流ソリューションを通じて、クライアント様の越境EC事業が輸送コストの制約から解放され、より多くの顧客に高品質な商品を適正価格で提供できるようになることを確信しています。そして、それがひいては日本と台湾間の貿易活動をさらに活性化させ、両国の経済発展に貢献できるものと信じております。

この画期的なソリューションの詳細と、それがクライアント様のビジネスにどのような変革をもたらすのか、今後の続報にぜひご期待ください。私たちは、越境ECの新たな未来を共に築き上げていく所存です。